大人はそんなに、振らない。


さて、冬が過ぎ春が来ても、私は未だ昼になると鶏肉を振る暮らしを送っておるのです。詳細は2月頃の日記を参照。夕方になると会社を抜け、駅前のマクドナルドに足を運ぶ。ほいで、チキンを。シャカシャカチキンですね? ええ、チキンを。シャカシャカチキンをおひとつ。ええ、だから。チキンを。といった。不毛なやりとりをひと通り終え、チキン、コーヒー、バーガーの乗った盆をそろりそろりと3階まで運び昼飯を流し込むルーチンワークをほぼ週5。が、今日は少し様子が違う。オーダーした憶えのない缶を盆に乗っけられたので、待ち給え、待ち給え、このようなものは注文した憶えはないが、これなんど? というニュアンスを込めた「ん?」という表情をしたところ、ええ、これは只今限定のオプション、試供品でございます、とのこと。なんだかよくわからないまま頂戴したそれは、ファンタを無理くりゼリー状に固めたような商品であるらしく、一般的の缶コーヒーサイズ、190mlかそこらの缶ににぎやかなデザインが施されてある。缶には、
「ガンガン振ってネ!」
といった文言が添えられてあり、が、その横には「炭酸」とも書いてある。私の知る世間の常識であれば、炭酸の入った缶を振るというのはこれ禁則事項であり、絶対にやったらあかんこと。しかし文言は、ちかっぱい振らんと飲めんけんねー、といった内容の但し書きであり、それ以前に!
「何かを闇雲に振る」行為というのは、大人であれば極力避けたいアクションである。なんとなれば、ものを振る行為は大概の場合、ばかの動作にしか見えないのであって、裏返して言えば子供はものを振るのが大好きである。子供は何かを闇雲に振るのが仕事であると言い切ってしまっても良いと思う。しかし私はどうだ。ものを振るべきでない年齢をとうに過ぎた私のもとに、振らなければいけないものがふたつ。さあ弱った。チキンについては、回数を重ねたおかげで「大人であることをギリギリキープしている振り」をマスターした。それがどういった動作であるかは敢えてここには書かない。各自見つけ出してほしい。問題は缶だ。なにせ初めてのものであるし、それ以前に炭酸問題が片付いていない。悩んでばかりもいられないので、とりあえず缶を数度、上下を逆にする動作を繰り返し、蓋を開けた。
困った。まるで出てこない。ほんの少し強めに吸引してみると、でろりとした塊が垂れ出てきたのだけれど、ここで私は思わぬハプニングに遭遇する。ノドに詰まったよフツーに。心底あたふたしながらも私は大人であるので、冷静にこれを対処した。この時点で分かったことは、この商品、味覚はファンタ的であるが、状態としては完全にゼリーのそれである、ということ。つまり、炭酸的なシビレはあるが、振ったところで噴出してくるものではないということ。しかし私は大人であるので、大きく振ることはせず、もう数度、軽く揺らす程度に止めた。栓も開いてるしね。しかし相手は「ガンガン振ってネ!」であるから、そうそう出てはこない。結句、内容物が垂れ出やすいようにと本体を極力垂直に近付け吸う……うわ、こっちのほうがばかの姿勢!「真上を向いて口に缶をくわえている」がもたらすだらしなさは、1mmたりとも大人であるとは言えんぞ、という教訓を伝えたかったの! 以上!
http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_000376.html