読 書 倶 楽 部

面白いラノベはねがー、中でも、キャラクターが活き活きと生きる、甘酸っぱい学園モノ、のラノベはねがー、と「件の9冊」をループ読み、時折顔を上げたかと思うと、面白いラノベはねがー。あと驚愕マダー? と喚く「残念ななまはげ」と化した俺に、
ラノベではありませんが」
顔が近いぞ吉川。と、吉川先生こと超能力者(悪口的な意味で)O-TO君がレコメンドしてきたのがコレ。

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

読みました。クソ面白!
とある瀟酒で清楚な名門女学院、の片隅に建つ、古い煉瓦造りの洋館でひっそりと運営される「読書倶楽部」にまつわる100年の歴史が、5つのエピソードで語られる、というのが大まかなアレ。様々な事情でアウトローにならざるを得なかった女生徒の吹きだまり、読書クラブが共通の舞台だけど、それぞれの時代(1968年、学園の創世秘話、1989年、2009年、2019年)の特徴的な背景が大きく作用しており、その「違う部分と変わらない部分」が生む歴史の積み重ね、時代と業(ごう)のうつろいみたいなものが、なんとも魅惑的なおはなしなのですよ。
「お嬢様学校」という設定や、装丁、書体、(『ウテナ』影絵少女的な)カヴァーイラストなどから勝手に感じていたゴス&オトメ*1な雰囲気は、全くないわけではないがそれがメインというわけでもなく、それよりもサンジェルマン・デ・プレ的、キャンティ族的なムードが強い*2。かといってそんな頭でっかちな感じではなくツラツラと読める適度に軽い文体が魅力的で、んもう、ツルッツル読める。しかけ・綴られ方も趣向が凝らされていて、最終章を読んでる途中でもう「もっかい最初から、聖マリアナ学園100年史を辿りたい!」とループ読みしたい気持ちにさせられる、クソ面白ぇ物語でした。
一応「ラノベ出身作家」ということですが、「読書クラブ」は最近出たばかりの新作のようで、過去の作品はどういう感じなんだろかー、と興味津々です。いくつか気になるタイトルがあるので手を出してみたい。
涼宮さんもそうだけど、この作品をまさに作中人物と同年代、ティーンの頃に読むと、また違った味わいがあるのだろうなー。きっと良い出会いになることだと思う。特に、悶々と日々やり過ごしているアウトロー高校生(帰宅部)には。もし今、現役高校生ならば、「読書倶楽部」や、SOS団的な活動を"実際に""高校で"やれるわけじゃないですか。まうごつうらやましかー。というわけで、どの読書感想を書くべきか、夏休み後半にして未だうろたえているヤングがもしうっかりここを覗くようなことがあれば、ぜひこの本に手を出してもらいたい。書き方に困ったら下記リンク先の書評をヒントにすれば良いんじゃねぇの?(無責任)
桜庭一樹「青年のための読書クラブ」|新潮社
意外に男気溢れる内容と、いかにも総合格闘技に長けていそうな著者名から、女性作家だと聞いてびっくり。
んで、まだまだ1冊程度では俺のなまはげ運動は沈静化の傾向を一切見せないので、引き続きこの場を借りて「だったらこのご本にも手を出してみれば良いのではないかしら」といった声を広く募集したい。残念な中年のための読書クラブをここに結成(ひとりで)。主に学園モノなどを好みます。

*1:つまり嶽本野ばら的なものを想像してたんですが実際はそうではなく、そこが良かった……と本書公式サイトを見たら、対談なさってました。やっぱり扱いとしては、同じ棚なんだろか。

*2:多分作者の趣味だと思われる、昭和四〇年代の描写がやけに力入ってる感じ。逆に1989以降はライトというか、サクサク進む感じ。昭和元禄文化に興味を持ったことがある人はそれだけで楽しく読めるかも。