俗の人の本棚。5

さて、毎日更新、というところまで忠実に再現しよう、と始めたコレのパクり企画ですが、最後の1つを残した段階で物っ凄虚しくなって。誰も望んでいない、ましてや書いている本人すらも望んでいない謎の企画。しかしこうやって「カタログ的」にモノが並ぶ、というのは「カタログ好き」にはそれだけでうっすらテンションの上がる要素もあるかと。カタログ好きはこのよく分からない修行のような気分を味わってみるもよし。というか本好きの方にぜひやってほしい。では最後。
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『倫敦巴里』
和田誠

話の特集・刊
和田誠さんが雑誌「話の特集」に書いた
イラストや文章をまとめたもの。
1977年。ちょうど30年前。
所謂「パロディ」「モジリ」を主に構成された
バラエティ・ブックといった感じの作品集ですが、
これがどれもこれもハイレベルなものばかり。

芸が細かい、というか
細部にこだわったつくりに
ニヤニヤしてしまう作品がずらり。
イラストがすばらしいのはもちろんのこと、エッセイの名手である和田さんの文章のセンスが様々なかたちで楽しめるのもこの本の魅力。なかでも川端康成「雪国」の冒頭の一節を、野坂昭如植草甚一筒井康隆谷川俊太郎etc……の特徴的な文体で「カヴァー」した「雪国」シリーズは出色。ひっじょぉ〜に大きな影響を受けました。もうこれはぜひもんで読んで欲しいものなので、どれかサンプルを……と書き起こそうかとも考えたがそれはアレなので、不肖私も挑戦してみる、というかたちをとらせていただきました(下のエントリ)。ちゃんと面白い「雪国」パロディが読みたい人は、本書を買い給え。ということで、ひとつ。もしくは貸すのでお近くの方はいつでも。
あとは色んな有名映画監督が撮影した「兎と亀」。これがまたすごい。「超望遠で太陽がとらえられている。こちらに向かって近づく影。逆光でゆらめいてみえる。近づくと兎(市川雷蔵)であることが分かる。雨に濡れる屋根(俯瞰)。その軒下を亀(船越英二)が歩いている。二人の出会い。真横からのショット」「銃声。兎、とび出す。スパイクに蹴られた土がスローモーションでゆっくりとび散る。カメラは兎を追う。スローモーション。宮川一夫の撮影が美しい」……とつい書いちゃいましたけど、これは市川崑。知らない監督の作品でも想像力で補う楽しみがあったりして。
この「Aの方法論を用いてBを描く」という手法。これがこの本には何度も登場するのですが、これ、なーんか身に覚えがあると思ったら、ロンバケと同じだ。ぼくが何度も何度も口が酸で溢れるほど好きだとわめいている、ケラさん率いるLONG VACATIONのカヴァーの流儀と同じものがここにあった。文章であれ音楽であれ絵画であれ、ぼくはどうもこのAでBを描いたC、という、2重のカヴァーに頗るフェティッシュなものを感じる質のようだ。ということで、ムダに長くなりましたが、これらの5冊だけは一生手許に置いておくだろうなー、という本棚丸見せコーナー、終了。疲れた。