おかゆの力

随分とパンクなアルバムを出す方がいるものだなあ、とこんなニュースを聞き驚いていたのだが、リストを眺めていてあまり見たことのない童話タイトルに出っくわした。
「おいしいおかゆ
気になった私はこれを即座に検索エンジンにオーダーし調べたのだけれど、どうやらグリム童話らしいがやはり聞いたことがない。もう一段階深く調べてみると、どうやらこのような話であるらしい。
http://hukumusume.com/douwa/PC/world/01/08.htm
大変破天荒な物語であった。「使い方を知らないの物を勝手に使うと、とんでもないことになる」という示唆に富んだお話だが、そのこと以上に「おかゆ」の持つ魔力的な力にこそ私は圧倒されたのだった。
「それでもおかゆは、止まりません」
この一行が持つ破壊力におののいた私は、様々の文末にこれを挿入し確かめてみた。

週刊新潮」に詐欺容疑で刑事告訴されるかのような記事を掲載され、名誉を傷つけられたとして、陸上の為末大選手が発行元の新潮社側に約4500万円の損害賠償などを求めた訴訟は2日、控訴審の東京高裁(富越和厚裁判長)で和解が成立した。それでもおかゆは、止まりません。

事態は収束を見たにもかかわらず、もっと大変な出来事が双方を襲う結果となった。

だれもかれもがおまえを見捨て、もう力ずくでもおまえを追い払おうとしたら、そのときはひとりきりになって、大地にひれ伏し、大地に接吻し、大地を、おまえの涙でぬらしなさい。それでもおかゆは、止まりません。

ドストエフスキーをしても、おかゆを前にしては全くの無力である。この「おかゆ」という3文字の上品かつ美しい佇まい、そして口にしたときのほろほろした柔らかさ、そこにこの言葉の持つ魔力的な力の秘密があるのだろう。おかゆ。この3文字に、世の全てのいざこざを鎮めるだけの力があるように私には思えてならない。戦争中の兵士がひとたび「おかゆ」と口にすれば、とたんに戦意は喪失してしまうであろう。そのあんぐりと開いた口に実際のおかゆを流し込んであげれば、なお一層武器を持つのもばからしくなるはずだ。銃を置いて椀を持つべきだと真に思う。ただし、おかゆは大変熱いので顔などにかけあってはいけない。